同じ金額を寄付しても、税の軽さは寄付先によって大きく変わる。全額が損金や控除の対象になる寄付もあれば、限度額の範囲でしか認められない寄付もある。その違いを決めているのが、税法が定める「寄付先の区分」だ。とりわけ分かりにくいのが、指定寄附金と特定公益増進法人(特増)という二つの言葉である。本稿は、寄付の優遇を「4つの区分」という一枚の地図に落とし込み、法人の損金算入と個人の所得控除・税額控除がどう変わるのかを、国税庁の一次情報に基づいて整理する。認定NPO法人がこの地図のどこに位置するのかも、あわせて示す。
- 4区分
- 寄付先は「①国・地方公共団体 ②指定寄附金 ③特定公益増進法人等 ④一般の寄付先」に分かれ、優遇の厚みが違う
- ①②は全額
- 国・地方公共団体への寄付と、財務大臣が指定した指定寄附金は、法人では全額が損金算入(限度額なし)
- ③は別枠
- 特定公益増進法人への寄付は、一般枠とは別枠の「特別損金算入限度額」まで損金算入できる(全額ではない)
- 個人の側
- 個人は「寄付金控除(所得控除)」が基本。特増・認定NPO・一定の公益法人等は税額控除も選択可
- 認定NPOの位置
- 認定NPO法人への寄付は、③特増と同様の別枠扱い。寄付集めの土台になる
なぜ「寄付先の区分」で税が変わるのか
寄付の税制優遇は、寄付する人への「ごほうび」ではなく、公益性の高い活動へ民間資金を誘導するための政策である。だから、公益性が高く緊急性のある活動ほど優遇を厚くし、そうでないものは絞る——税法はこの発想で寄付先を区分している。区分を知ることは、同じ善意をより効かせるための地図を手に入れることに等しい。
まず大枠として、法人税法・所得税法・租税特別措置法は寄付先を次の4つに分ける。上から順に優遇が厚い。
| 区分 | 例 | 法人の損金算入 | 個人の控除 |
|---|---|---|---|
| ①国・地方公共団体 | 国、都道府県、市区町村、公立学校・図書館等 | 全額(限度額なし) | 所得控除(全額対象) |
| ②指定寄附金 | 国宝の修復、オリンピック開催、赤い羽根の特定キャンペーン等(財務大臣が指定) | 全額(限度額なし) | 所得控除(全額対象) |
| ③特定公益増進法人・認定NPO等 | 公益社団・財団、学校法人、社会福祉法人、独立行政法人、認定NPO法人 | 別枠の特別損金算入限度額まで | 所得控除、または税額控除(有利な方) |
| ④一般の寄付先 | 上記以外の一般社団・財団、NPO法人等 | 一般の損金算入限度額まで | 原則対象外 |
①国・地方公共団体への寄付
国や地方公共団体への寄付は、法人では支出額の全額が損金算入され、個人では寄付金控除(所得控除)の対象になる。公立学校や公立図書館への寄付、自治体への災害義援金などがこれにあたる。ふるさと納税もこの系譜にある制度だ。公の主体に直接資金が渡るため、優遇はもっとも単純かつ手厚い。
②指定寄附金——「全額」の特別扱い
指定寄附金とは、公益社団・財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人・団体への寄付のうち、広く一般に募集され、かつ公益性・緊急性が高いものとして財務大臣が指定したものをいう。指定されると、法人では限度額なく全額が損金算入され、個人でも全額が所得控除の対象になる。
具体例としては、国宝や重要文化財の修復、オリンピック・パラリンピックの開催、私立学校の教育研究、大規模災害時の義援金、赤い羽根共同募金の特定キャンペーンなどが指定されてきた。ポイントは、「団体」ではなく「特定の募金・目的」に対して個別に指定される点である。つまり同じ団体でも、指定を受けた募金への寄付は全額対象、通常の寄付は後述の別枠扱い、という違いが生じうる。緊急の社会的必要に民間資金を素早く集めるための、いわば税制の非常口だ。
③特定公益増進法人(特増)——「別枠」の損金算入
特定公益増進法人とは、教育・科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すると法令で定められた法人をいう。独立行政法人、公益社団法人・公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人などが該当する。
特増への寄付のうち、その主たる目的である業務に関連する寄付は、法人において一般の寄付金とは別枠の「特別損金算入限度額」まで損金算入できる。全額ではないが、一般枠を消費せずに追加で損金にできるため、実質的な優遇は大きい。
限度額の算式は次のとおり(普通法人の場合)。
- 特別損金算入限度額(特増・認定NPO等)
- 〔(資本金等の額 × 当期の月数/12 × 3.75/1000) + (所得の金額 × 6.25/100)〕 × 1/2
- 一般の損金算入限度額(一般の寄付先)
- 〔(資本金等の額 × 当期の月数/12 × 2.5/1000) + (所得の金額 × 2.5/100)〕 × 1/4
数式が示すとおり、特増への寄付枠は一般枠より率が高く設定されている。両者は別々に計算され、特増枠は一般枠に上乗せされる。適用には、確定申告書に別表14(2)「寄附金の損金算入に関する明細書」を添付し、その寄付が主たる目的の業務に関連する旨を証する書類(受領証等)を保存する必要がある。
④一般の寄付先
上記のいずれにも当たらない一般社団・財団法人やNPO法人(認定を受けていないもの)への寄付は、法人では一般の損金算入限度額までしか損金にできず、個人では原則として寄付金控除の対象にならない。「認定」の有無が、寄付集めの力に直結するのはこのためである。
個人の側——所得控除と税額控除
個人が寄付した場合、基本は寄付金控除(所得控除)で、「その年の特定寄付金の合計額 − 2,000円」を所得から差し引く。控除対象となる寄付金の合計額は、総所得金額等の40%が上限だ。国・地方公共団体、指定寄附金、特増、認定NPO等への寄付がこの特定寄付金にあたる。
さらに、特定公益増進法人の一部(公益社団・財団法人等)、認定NPO法人、一定の学校法人・社会福祉法人などへの寄付は、所得控除に代えて税額控除を選べる。税額控除は「(寄付合計 − 2,000円) × 40%」を所得税額から直接差し引く方式で、所得がさほど高くない層では所得控除より有利になりやすい。どちらが得かは所得と寄付額で変わるため、両方で試算するのが実務の定石だ。控除全体の見取り図は寄付控除 徹底解説に、認定NPOに絞った解説は認定NPO法人 完全ガイドにまとめている。
認定NPO法人はこの地図のどこにいるか
寄付者にとって実務上もっとも身近なのが認定NPO法人だ。認定NPO法人・特例認定NPO法人への寄付は、法人では特増と同様に別枠の特別損金算入限度額まで損金算入でき、個人では所得控除または税額控除(40%)を選べる。つまり認定NPOは、③の区分に「準じる」形で優遇が設計されている。どの認定NPOがあるかは、当サイトの団体データベースで「法人種別=認定NPO法人」で絞り込める。財務データを持つ団体は「財務データありのみ」で抽出でき、規模や健全性の目安も確認できる。
実務の要点——「区分」を確かめてから寄付する
大口の寄付を計画するなら、まず寄付先が4区分のどこに属するかを確認する。指定寄附金にあたる募金なら全額、特増・認定NPOなら別枠、一般の団体なら限度内——この違いだけで、同じ寄付の税効果は大きく変わる。法人であれば別表14(2)と受領証の保存を、個人であれば所得控除と税額控除の有利判定を忘れずに。制度は改正されることがあり、個別の適用は税理士・公認会計士への確認が欠かせない。
税をどう軽くするかは目的ではなく、意志をどれだけ遠くまで届けるかの手段である。区分の地図を持っておくことは、その意志を最大化するための、静かで確実な備えだ。設計に伴走が必要であれば、フィランソロピストアドバイザリーが中立の立場でともに考える。
- 国税庁 No.5283 特定公益増進法人に対する寄附金 ↗
- 国税庁 No.5281 寄附金の範囲と損金不算入額の計算 ↗
- 財務省 特定公益増進法人 ↗
- 国税庁 寄附金を支出したとき ↗
- 文部科学省 法人が寄附した場合の税制上の優遇措置 ↗
- 動物福祉への寄付——殺処分ゼロと、その先の設計——関連論考。
- 芸術文化への寄付——アーツカウンシルと「アームズ・レングス」の思想——関連論考。
- 遺贈寄付の現在地——人生の最後に、意志を手渡す——関連論考。
出典・参照
- 法人税法・所得税法・租税特別措置法(寄付金の損金算入・寄附金控除・税額控除)
- 国税庁 タックスアンサー No.5283(特定公益増進法人)/No.5281(寄附金の範囲と損金不算入額の計算)/「寄附金を支出したとき」
- 財務省「特定公益増進法人」/文部科学省 寄附ポータル
- 関連:寄付控除 徹底解説/認定NPO法人 完全ガイド/財団設立 完全ガイド/団体データベース
本記事は一般的な情報提供を目的とし、特定の寄付を推奨・勧誘するものではない。損金算入限度額の算式や控除の有利判定は個々の状況により異なり、制度・税制の細部は改正されることがある。実際の寄付・申告は税理士等の専門家に必ず確認されたい。